わたし時間の楽しみ方

クニエダヤスエさんのエッセイは、20代の頃から大好きで、よく読んでいました。クニエダヤスエさんの文章には、心と体を癒してくれる不思議な力があるように感じています。今思えば、休日も少なく精神的にハードな仕事をしていた当時、本を開くと心が軽くなって、また前向きに頑張れたのかもしれません。

つい最近、古本で購入した「クニエダヤスエのすてきなひとり暮らし」という本。〝わたし時間の楽しみ方〟というサブタイトルがいかにもクニエダさんらしい表現で、とても気に入りました。
帽子デザイナー、テーブルコーディネーター、エッセイストとして仕事を持ちながら、家事もしっかりこなし、忙しいながらも自分らしく暮らしを楽しむクニエダヤスエさんの生き方は、いつもお手本とするところです。

この本には、毎朝お湯を沸かしポットにたっぷりのアッサムの紅茶を淹れて飲むレモンティーのこと、ひとりの食事でもきちんと準備すること、季節の花を家の中に取り入れ楽しむこと、顔を洗ったり食事をするのと同じように手紙を書くこと、誰かに贈り物をするときは自分らしく工夫して手作りで、眠る前のひとときを大事にする、など〝クニエダ流・お気に入り時間の過ごし方〟がおさめられています。

40年以上も前にスウェーデンで購入された古くなってほつれたランドリー袋に当て布を縫い付け大切に使い続けたり、布のはぎれで小物袋やクッションカバーを作ったり、読んでいたら久しぶりに私も縫い物をしたくなりました。
20歳を過ぎた頃、友人や会社の先輩の影響で洋裁をはじめました。服飾雑誌「so-en」や「ジュニア・スタイル」を愛読するようになり、好きな生地を見つけては洋服を作ったりしていました。昔からある古い手芸店でいろいろな毛糸を選んでもらい、so-enに載っていた薔薇の花模様を編み込んだ複雑なセーターも編みました。
こうして若い頃は、仕事の合間に洋裁や編み物をしたり、クニエダヤスエさんが本の中で紹介されていたティーカップに似たものを探して自分も使ってみたり、他にもいろいろ日々の楽しみを見つけて過ごしていましたが、ここ数年はそうした時間を持つことを忘れてしまっていたように思います。

6月に入りました。
毎日があっという間に過ぎていきますが、一日のうちのほんのわずかな時間でもささやかな〝わたし時間〟を作りたいと思っています。

kayo
女性向け古本担当  会社員として過ごしていたある日、ネットで生まれてはじめて買った古本『暮しの手帖』。この一冊がわたしの運命を大きく変えた。まもなく脱サラして結婚と同時に夫婦でオンライン古書店をスタート。人の普段の暮らし方について興味があり、増田れい子・住井すゑ・岡部伊都子・クニエダヤスエなどエッセイを好む。手紙舎の古本のセレクトを主に担当。千葉県出身。一児の母。書道師範。

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