私は、いわさきちひろさんの絵が大好きで、練馬のいわさきちひろ美術館に何度か足を運びました。はじめて行ったのは、まだ改装前の頃で、2階へ上がる階段の踊り場に展示されていた数点の白黒のヒゲタしょうゆの広告を見て、幼い頃どこかで見たような懐かしい母と子の姿に強く心を奪われました。その後リニューアルされた練馬の美術館に行ったときには、あのとき見たヒゲタしょうゆの広告はありませんでした。
私の生まれ故郷である銚子には、ヤマサやヒゲタなどの醤油工場があり、工場見学ができるようになっています。銚子にあるヒゲタしょうゆの史料館には、私が見たものと同じ作品ではありませんが、いわさきちひろさんの手がけられた広告が数点展示されています。
実家の本棚にある「いわさきちひろ作品集 7 詩・エッセイ・日記ほか」(1977年初版)。いまから10年以上前に購入したものです。となりにある卓上しょうゆは、工場見学をする際に頂けるもの。
この作品集には、ヒゲタしょうゆの広告だけでなく、いろいろな企業のポスターやパンフレットなどの作品が多数おさめられています。
ヒゲタしょうゆの仕事は、新聞広告・ポスター・紙袋など、昭和27年から昭和48年までの約20年に渡って続けられ、初期の頃の経済的に苦しい時代の貴重な収入源になっていたそうです。エッセイなども含め、いわさきちひろさんの本についてはたくさん読んだので、どの本だったかは覚えていませんが、このことについては、本人の言葉で書かれていたのを読んだ記憶があります。
政治家の夫、そして一家の生計をも支えるため、生まれて間もない息子を信州の父母に預け、絵を描き続ける日々。生活のため子と離れて暮らす中、溢れ出る母乳を我が子に与えることができないちひろさんは、近所に住む赤ちゃんに飲ませていたそうです。その赤ちゃんとは三宅裕司さんであり、信州の祖父母の家に預けられていた息子さんは、ヤギの乳で育ったというのを本で読みました。
香ばしく網で焼かれた秋刀魚が美味しそうです。これに醤油をたらりと。ご飯がすすみそうな広告。
この丼で天丼を食べてみたいと思いました。薄い緑と紫のクローバー柄のコーヒーカップとソーサーがかわいい。
贈答用の醤油缶。色とりどりのバラ模様の缶がレトロです。
ヒゲタしょうゆ史料館には、いわさきちひろさんのポスターの他、新聞広告、古いしょうゆ瓶やおそらく当時何かで配布されたと見られる商品(紙風船・鉛筆・丼・コーヒーカップなど)、醤油を製造するための道具などが展示されています。工場見学は無料です。